ゔぇにおの日記(仮)

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ヤング≒アダルト ネタバレ感想

 

「あの頃はよかった」というのは誰でもつい言ってしまうセリフであるが、その極端が主人公メイビスだ。今風の言い方に対応できなかったり、時代遅れの店や音楽を好むところにそれが顕著に現れるが、自分自身とも重なって正直辛い。映画のタイトルでもあり彼女の小説のターゲット層でもあるヤングアダルトというワードが、大人になりきれない彼女と痛いくらいよく合う。


バディはその好対照とも言える存在で、子を持つ父となった今、メイビスと付き合っていた頃とは大きく違う暮らしを送っている。たしかに自由はないのかもしれないが、確実に幸せな生活だ。変化を受け入れられたのか、そもそも過去に囚われていないのか。いずれにせよ、彼はメイビスがなり損ねた存在と言える。


マットは過去いじめの被害にあい、今でも後遺症を抱えて生きている“デブのオタク”。メイビスに憧れているが故か、彼女の支えとなる人物となる。心優しい男で、個人的にはかなり好きな人物だった。


そんな彼らのキャラクターから考えると、この映画は「過去とどう向き合うべきか」という問題をテーマにしているのだと思う。そしてこれには人それぞれの答えがあるのだと思う。絶対的な正解不正解はない。


メイビスは終盤で取り返しのつかない失態を起こしたが、これも過去に囚われた彼女が前を向くきっかけとなった。

メイビスの信者とも言えるマットの妹は“味方”ではあるがメイビスが変わるには“敵”とも言える存在であり、最後に彼女はそれに気づいて町を出た。過去との“決別”を選んだのがメイビスだと思う。

切ない物語だが結果的には過去を振り切ることができたので救われたんだと思う。


メイビスにとって過去が栄光なのに対し、マットにとっては暗闇である。しかし後遺症が忘却を許さない。過去を消し去れないという点で物語中盤のメイビスと共通するが、それとの向き合い方は決定的に違う。学校の森でメイビスと語り合う(?)シーンがかなり象徴的だ。


先の問いに対し決別という答えを選んだのがメイビスだったが、この答えを彼に当てはめるのは酷だと思う。おそらく彼は“どうにか過去と付き合いながら生きる”ことを選んでいる。


良い過去との決別を選んだメイビスと悪い過去と向き合い続けるマットという構図がなんとも遣る瀬無いが、両者とも現実と向き合うためにそれを選んだのだ。


自問自答になるが、先の問いに対し一般的な答えを与えるとするなら、「現実と向き合えるように過去ともうまく付き合いなさい」といったところだろうか。


内容は若干重たいがコメディ映画として作られており、クスッとするところはキチッと決めてくるので楽しく鑑賞できた。

 

ヤング≒アダルト (字幕版)

ヤング≒アダルト (字幕版)