映画 ラン・ローラ・ラン 感想
GYAOで映画を漁っていたところ、あらすじが非常に面白そうだったので見てみました。
ちなみに、僕も見てから知ったのですが、逃走中のあのBGMはもともとこの映画の曲です。
あらすじ
裏金の運び屋である恋人マニがうっかり失ったボスの10万マルクを20分以内に工面し彼の命を救うため、ローラは走り続けます。
ドイツの映画で、舞台もベルリンです。
感想
まず、物語の始まりの演出がオシャレで期待感を高めてくれました。これについては後述します。
全体的にテンポが良くオシャレな映画で、すごく良かったです。個人的にはローラのビジュアルがかなり好きでした。顔もいいです。
上映時間が80分なのに対し、タイムリミットが20分なので一体どんな時間の使い方なんだと気になっていましたが、この映画では、ローラが走り続けた20分がパターンを変えて3回繰り返されます。一見するとループものに見えます。
基本的にはずっとローラが走っている映画なのですが、その道のりで起こることや結果、さらにはすれ違う人々の運命が彼女の行動の選択により大きく変わってしまいます。所謂バタフライエフェクトというやつです。
些細なタイミングのズレで世界が大きく変わってしまう様子が3回の“20分”の中で鮮やかに描かれていて面白かったです。断片的に描かれてきた事象同士の繋がりが明らかになったときは感動しました。非常によく練られた構造をしていると思います。
考察
見終わってみると、冒頭で紹介された2つの金言と警備員のセリフが非常に活きています。
我々は全ての探究を終えたとき、初めて出発点を知る
T•S•エリオット
試合の後とは、試合の前のことだ
S•ヘルベルガー
それから警備員のセリフを要約すると
「人々は無数の問いに答えを探し、その過程で連鎖的に問いが増えて行くが、結局問いも答えも1つしかないのではないか。」
「(サッカーについて)ボールは丸くて試合は90分、それだけが事実であとは全て推測でしかない。」
といった感じになります。
金言に出てくるワードと物語中の事物の対応は
無数の問い→ローラの行動の選択肢
無数の問いの答え→ローラの行動から派生する影響
唯一の問い→ローラとマニはどうなってしまうのか
唯一の答え=試合後→ローラとマニが迎える本当の結末
探究=推測→“20分”の繰り返しのこと
出発点=試合前→ローラのバイクが盗まれたこと
事実→マニが裏金をなくしたこと
というように成り立つと思います。
つまり、この物語の場合は事実というのがマニが裏金を失くしたことまでしかなく、3つの“20分”はあくまで推測でしかないというのが私の見方です。最終的にローラとマニが迎える運命は当然1つしかないはずです。結局彼らの迎える結末はどんなものかわかりませんが、どんなものであろうと「ローラのバイクが盗まれたこと」という原因に帰属します。
すなわち、これはループものではないんじゃないかというのが私の出した結論です。そもそも時間が巻き戻せるわけないのですから。(当たり前だよなあ?)
ただ、「20分で10万マルク用意しないと恋人が死ぬ」という絶望的な状況にも一応は乗り越える術があることが3回目で示されています(だいぶめちゃくちゃですが...)。
「運命はなるようにしかならないし、なるようになる、出来ることをやればいい」といったメッセージ性もあり、見るものを励ましてくれる優しさも少なからず含まれていると思います。
僕たちも人生についてそんなに悩まなくてもいいのかも知れません。どんなに悩んだところで推測でしかなく、結局問いも答えも1つしかないのですから。