ゔぇにおの日記(仮)

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映画 天気の子 感想

新海誠の作品は大好きなのですが、知ったのが割と最近なので秒速や言の葉の庭は劇場で見られませんでした。それが悔しかったのでそれ以降は欠かさず劇場で見ようと誓いました。

ただ、前作「君の名は。」はあまり合わず、今作もあまり期待していなかったというのが正直なところです。

ただ今作は非常に面白かったです。全体的に前作のスタイルに近いですが、かなりハマりました。

 

ビジュアル

新海誠作品の絵は綺麗なことで有名ですが、今作は今までの作品と比べても段違いで素晴らしかったと思います。

雨のシーンが多い点では「言の葉の庭」と似ていて、前評判でも雰囲気の近さが指摘されていましたが、ビジュアル的な面で「言の葉の庭」に通じるものはあまりなかったように思います。物語の構成上「雨」というものが担う役割が大きく違い、今作の雨は基本的に「言の葉の庭」のそれよりもっと強かで無機質に描かれています。これが陽菜さんの晴れ女としての能力が魅力的に写る理由なのかなと思います。

ファンタジー的な壮大さが強調されている点でも、むしろ「君の名は。」(以下前作という)に近いビジュアルだったと思います。ビジュアル面だけでなく、あらゆる点で前作に近いものがありました。

 

音楽

前作のように音楽が前に出てくるシーンが盛り上げ役を担っていますが、音楽の使い方は前作よりも良かったと感じます。前作はちょっとRADが立ちすぎて彼らのMVみたいになってしまっていたのが若干気になっていたのですが(特に前前前世)、今作は曲調も相まってかしっかりと映画を引き立てています。

予告編から思っていたのですが「グランドエスケープ」という曲が非常にいい曲で映画によくハマっていて素敵です。

通常の劇中音楽もいい味出してたと思います。それから、壮大な景観の中で無音になる演出も好きでした。

 

ストーリー

前作ほどめちゃくちゃな設定ではないので、割とスッと入ってきやすいと思います。

ファンタジーといっても世界そのものが現実離れしているというより、現実世界に天変地異と天気の巫女という要素が付加された感じです。

構成としてはやはり前作に近いものがあります。起承転結でいう結の部分の流れは特に前作を彷彿とさせます。

踏み込んだことは末尾に折りたたんで記します。

 

総評

かなり面白かったです。

前作で打ち立てたスタイルを踏襲しつつも、前作で感じたストーリーや音楽の使い方の雑さが改善されてより洗練された印象を受けます。

前評判で本田翼の演技が話題になりましたが、特に心配する必要はないと思います。むしろ夏美のキャラをよく立てていたいい演技だと思います。ただ喋り方に若干癖っぽさは感じるので、収録は大変だったんだろうなと推測しています。

適切な表現ではないかもしれませんが、改良版「君の名は。」といった感じの万人受けする映画だと思います。ただ、私はあまり詳しくないのでなんとも言えませんが、文字を読むゲームとの類似性が指摘されるように、刺さるところにもしっかり刺さる映画なんだと思います。

 

伏せて書きたいことたち

個人的な推測も含めてとりとめもなく書いていきます。ネタバレを含むのでご鑑賞の後にお読み頂ければ嬉しいです。

※7/26:一つ追記しました

※7/31:陽菜さんを陽奈と表記していたので改めました。

ストーリー・登場人物・考察など ストーリーの展開として、これほどまで真っ直ぐなボーイミーツガールだとは思いませんでした。なんとなく監督に大衆ウケが嫌いそうなイメージがあったので、ちょっと意外でした。前作もボーイミーツガール的なところはありますが、設定上共に過ごした時間(接触した時間)が非常に少ないので想いの育み方が特殊で、王道とは違うと思います。前作はそれがロマンチックでよかったのですが、今作はかなり正統派で攻めてきた感じです。
ストーリーに不明瞭な点も多いですが、「そんなことは2人にとってどうでもよくないか?」というスタンスを取ることで2人にフォーカスしているように感じました。敢えて枝葉の部分は切り落としているのではないかと思います。 ただそれでも気になるところはありますが...。
予告編からの印象で須賀さんは悪役っぽいなあと思っていたのですが、僕の想像通りではありませんでした。セリフと銃声の組み合わせだけでコロッと騙されてしまったのが恥ずかしいです。
そもそもの天変地異の原因として、人柱(というより生贄)が不足していたんじゃないかなと思います。空で横たわる陽菜さんに魚が群がっていましたが、あれは捕食のためなんじゃないかなと思っています。劇中のSNS上でも魚に臓器様のものを確認している人がいましたが、それはあの魚が生物であり、他の生物を食べる必要があるんだぞというアピールだと思います。魚が雨とともに降ってきていたのは、川に魚が浮くようなイメージで、彼らの死を表しているのではないかと考えました。魚だけでなくクジラのような塊も確認されていたので、空に何かしらの生態系があって、生態系全体の飢餓が天変地異の原因になっているんじゃないかなという推測です。この説を提言する以上人柱というより生贄という方がしっくりくるので以下そう呼びます。
巫女の能力は生贄になることへの対価だと思うのですが、生贄が不足している以上、陽菜さんがならなくても誰かが巫女になっていた(されていた)と思います。廃ビル屋上の鳥居が空に繋がるトリガーとなる描写がありましたが、多分他にもトリガーはあるんだと思います。
帆高くんが空へ飛べたのも、鳥居のトリガーを引いたからだと思いますが、彼は男性なので巫女にはなれず魚に拒絶され(少なくとも逃げられてはいた)、結果として陽菜さんを救うことができたんじゃないかと考えています。この辺は正直よくわかりませんが。
帆高の家出の理由はほとんど語られませんが、彼の持っていた「ライ麦畑でつかまえて(The Catcher in the Rye)」という小説がヒントになりそうです。実家に帰ってから問題なく高校を卒業して東京農工大に受かっているので放校になったわけではなさそうですが、彼を主人公ホールデンと見立てると、旅立ちのシーンにおいて彼の顔が傷だらけだったのも含めて通じるものがあります。