ゔぇにおの日記(仮)

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映画「ポゼッション」感想

タイトルのPossessionには我々のよく知る意味から転じて悪魔に取り憑かれることの意もあるらしいです。キリスト教文化圏ではメジャーですが、日本だと取り憑かれる系のホラーって少ないような気がします。

よく知る人間が変貌して恐怖の対象になるというのは絶望的でいいテーマだと思います。小さい頃は青鬼ver.6で仲間たちが青鬼に変わっていくシーンとか、のびハザのお母さんがゾンビ化してるシーンとかがとても怖かった記憶があります。

 

ただ本作はホラーとしてはあまり怖くないかなという印象。私が注目したのはむしろ、父親の娘への愛です。恐怖シーンでも彼はほとんど怯むことなく娘と向き合い続けます。だからこそ恐怖表現としてはイマイチなのかもしれませんが。

私が好きなのは彼自身が彼なりに努力して悪魔祓いを試みるシーンです。単なる恐怖のみならず接近禁止という障壁もあった中で、娘を救おうという覚悟が感じられます。

ただあの母親はあまり好きになれません...。主人公が父親側なので、視点の問題かもしれませんが。

ラストシーンの後味の悪さはなかなかのものです。やはりこの手の物語は根本的には解決せずに終わる方がいいですね。日常生活から切り離せなくなるので。

 

なんとなくホラーとしては“奥ゆかしすぎる”印象を受けました。ゴア表現もなければびっくり要素もないです。この手の作品としては理不尽さが足りていないような...。実話に基づく話らしいのですが、だからといってそのレベルまで恐ろしさの質を落とさなくてもいいのになと思います。

この作品の目指すところがそもそもホラーとは違うのかもしれません。“恐怖”と“家族愛”が競合した結果どちらも中途半端になっている感じがしました。“大切な人”と“恐怖の対象”が一致している点では冒頭に挙げた2つの例と共通しますが、変貌した人間に救いようがあるかという点で決定的に感じるものが違います。この作品には絶望感がありません。

この辺は悪魔祓い系の宿命なのかなとも思いますが、同系統の他の作品ではどうなっているか気になります。

 

ポゼッション(字幕版)

ポゼッション(字幕版)